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2007年02月26日

内部建具

住宅には少なからずドアや引き戸といった内部の建具があります.中には「違いがわかる男」でも有名な建築家・清家清さんの自邸のように内部建具がひとつも無い住宅もありますが,かなり例外です.(この清家邸については 「私の家」白書 戦後小住宅の半世紀 に詳しくあります.)
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なぜ建具が必要かというと,やはり部屋の独立性を高めるためということになると思います.光や音が洩れないように,また視線を遮るためといった機能です.でも場合によっては光が通った方がいい場合もあります.画像は玄関ホールから居間に入るドアです.玄関ホールが暗いので少しでも居間の光が入るように大きな透過性のポリカーボネート板が入っている框(かまち)ドアです.ガラスの場合は割れると危険なので強化ガラスを使いますが,ここでは乳白で2重になったツインカーボというものを使っています.多少の衝撃にも割れませんし,仮に破損してもガラスのように破片で怪我をする危険がほとんどありません.

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トイレや脱衣室の場合は大きなガラスがあって中の様子が分かっては都合が悪いけど,中の照明がついているかどうかだけはわかるように小さなガラス(額)を入れます.また,換気の関係で空気を通したい場合もありますが,その時はガラリを付けたり,ドアの下の部分の床(敷居)との間を少し開けて(アンダーカットといいます)空気が通るようにします.

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逆に寝室のドアなどは光も音も遮断したいので,枠の部分にゴムのパッキン材を付けたりして気密性の高い作りにすることがあります.

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以上は建具の機能的な面での話でしたが,インテリアのデザイン要素としても建具はとても重要です.後半の3枚の画像は同じ住宅の建具ですが,しな合板に目地をとり,オスモカラーという天然系塗料で色分けしてデザインしました.高価な材料を使うのではなくても,ちょっとしたデザインで個性的な表情が出せれば,楽しいと思います.

2007年02月07日

寝室

イギリスを旅したとき,B&Bと呼ばれる一般の民家に何度か泊まりました.B&BはBed&Breakfastの略で朝食付きの宿のことです.日本のビジネスホテルのようなところもありますし,一般の民家で民宿のように営業しているところもあります.最初の画像はスコットランドのピットロホリー(Pitlochry)という街で宿泊した部屋です.いわゆるロフトというか最上階の小屋裏のような部屋でした.窓は画像のトップライトだけです.広くはありませんがそれでいてなんとなく落ち着きました.
ピットロホリーのB&B

この部屋に泊まって思い出したのが山登りをしていた頃のテントです.とても狭い空間ですが,そこにいると何となく落ち着く感じがします.人にはお母さんのお腹の中にいた記憶が残っていて,そうした狭いところで妙に落ち着いて眠れる,いわゆる胎内回帰といった習性があるようにおもいます.
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そのようなわけで寝室はあまり天井を高くしないでこぢんまりと,ただ目覚めがいいように朝日が入るように東向きで,というように考えます.室内の仕上げもやさしくあたたかいもので,照明もほんわり柔らかくが基本です.
寝ているとはいえ,一日の最低三分の一を過ごす寝室ですから大切にしたい空間です.
お宿かげやまのゲストルーム

2007年02月02日

地球温暖化

暖冬です.テレビの解説によるとエルニーニョ現象の影響だそうですが,やはり地球温暖化が進んでいるように感じます.私の住む釧路はもともと冷涼な気候なので,「すこしくらい温暖化したほうが過ごしやすいかな」などと勝手なことを考えてしまいますが,長い目で地球全体の環境を考えるとやはり何とかしなければならないのだと思います.特にモルディブのように島々で成り立つ国は,温暖化で海面が上昇すると水没してしまうので問題は深刻です.
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地球温暖化対策についてアメリカ合衆国は消極的なようですが,ヨーロッパの国々は熱心です.画像のヴェネチアやアムステルダムのように海面上すれすれにある都市があることが大きな理由のひとつですが,なにより歴史ある熟成された社会で末永く物事を見る価値観があるからだと思います.
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では,建築をつくる上で地球温暖化についてできることを考えると,ひとつは以前のコラムにもあるように地場産の木材をできるだけつかうことにより空気中の二酸化炭素を固定化することです.もうひとつは高気密高断熱で,エネルギー消費の少ない建築をつくることでしょうか.断熱性能を高める,太陽熱を利用するパッシブ・ソーラーやソーラーパネル,あるいは地中熱を利用するヒートポンプシステムを取り入れるなどの方法があります.ただここで問題になるのはイニシャル・コスト(最初にかけなければならない費用・初期投資)とランニング・コスト(運転・維持費用)です.他の方法に比べてイニシャル・コストを少なくとも10年くらいでランニング・コストで回収できなければなかなか採用できないかなと思います.