コラム トップ

暖房のランニングコスト

 ここ数年私が設計してきた住宅は,深夜電力を利用した蓄熱式の暖房ばかりでした.場合によって補助的に融雪電力を使ったり,あるいはオーナーさんの意向でペレットストーブや薪ストーブを併設することもありましたが,メインの暖房は深夜電力でした.それというのもランニングコストが灯油など他の熱源に比べて安かったからです.

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温熱環境の計画

私が事務所に使っている建物はもともとは「コージィベール摩周南」という温泉付き分譲地のセンターハウスです.豊富な温泉を利用してその熱で暖房しています.これまで寒いと思ったことは無かったのに今年はちょっと事情が違いました.1月の上旬,ものすごく寒い日が続き,部屋が暖まり切らなくなりました.最低気温が連日-25度以下になり,一日の平均気温が-17度といった日が一週間くらい続いたのです.さすがに暖房能力が追いつかなくなったのでした.
厳寒の日の出

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エネルギーと環境問題

この冬,北海道ではとうとう灯油の値段が1リットルあたり100円を超えるようになりました.異常事態といってもいいと思います.5,6年ほど前までは40円くらいの値段だったのに,じわりじわりと値上がりし,今年になってグンとあがりました.灯油のストーブやボイラーを熱源にしている家では今年の冬は暖房費に相当の負担を強いられそうです.
ここ数年,原油高の傾向が続いていたせいもあって,最近は暖房の熱源を電気にする家が増えてきました.釧路地方では06年の新築住宅のおよそ7割がいわゆるオール電化住宅で,ガスや灯油を使わず給湯,暖房,調理コンロのすべてを電気に頼るようになっています.なかでも一番ランニングコストが問題になるのが暖房ですが,安価な深夜電力をつかう蓄熱暖房器だとあきらかにメリットがあります.2年前の月曜塾での勉強会の資料によると灯油単価が55円/Lくらいで石油による温水暖房(ボイラーによるセントラル暖房)がオール電化蓄熱暖房とランニングコストで同等となるそうですから現状の灯油単価では明らかに差があります.
蓄熱暖房機

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登録林分

さる10月24日に北海道木質構造開発協議会の活動で釧路市音別町にカラマツの登録林分を見学してきました.登録林分,聞き慣れない言葉です.実は見学中もこの言葉の意味がはっきり解らずにいて居心地の悪い思いがしていましたが,帰ってきてからネットで調べてすっきりしました.林分(りんぶん)とは香川県のこちらのサイトによると「林相(構成樹種、樹高の均一さ)がほぼ一様で、しかも周囲の森林とはっきり区別ができるような林地。」と解りやすい解説がありました.今回見学したのは民間の所有ですが,植林されてから54年と53年を経たカラマツの植林で,なおかつ行政機関(北海道)によって価値のあるものとして登録されたところです.紅葉の始まった森は色鮮やかで森の香り(フィトンチッド)を満喫しました.
カラマツの登録林分

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ゴミ焼却施設の見学

建築設計事務所協会釧路支部主催の企画で釧路広域連合清掃工場を見学してきました.
釧路広域連合清掃工場外観
釧路広域連合とは,釧路市・釧路町・鶴居村・白糠町により構成される可燃ゴミの処理のための行政の集まりです.去年完成したこのゴミ焼却施設は「流動床式ガス化溶融炉」という最新式ともいえる設備です.

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「地材地消住宅」完成見学会のご案内

建設段階でも見学会をした,できるだけ地元の木材を使ったTY邸が今週いよいよ完成するので,広く一般の方々に見ていただきたく,一般公開する事となりました.
日時:平成19年6月2日(土)・3日(日)の2日間
時間:午前10時~午後6時
場所:川上郡弟子屈町美留和465-3

    (国道391号線沿い・さけますふ化場近く.国道の敷地入り口にのぼりが立っています.)
PDFファイルによる案内図のダウンロードはこちらからどうぞ
お問い合わせ先:MOBI(モビ)建築・都市研究所 辻谷 0154-55-0615
            株式会社イー・ワークス 芳賀      0154-23-5960

室内
今回の住宅では柱・梁等の構造部材の多くに,国有林のパイロットフォレスト(標茶町・厚岸町)産からまつの無垢材や集成材を使っています.しかもボードに覆われることなく表しのままの部分がありますので,その美しい色合いや木目がご覧いただけます.その他,外部の板張りには厚岸町の道有林産とどまつを,内部の壁仕上げには津別町で生産しているからまつの合板を使用するなど,地場産の木材にこだわり,木の柔らかさ・あたたかさ・やさしい香りいっぱいの建物となっています.住宅に使用している全木材のうち,8割あまりが道産材です.

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浄化槽

間もなく竣工のTY邸では浄化槽が設置されました.公共の下水道がないところでくみ取りではなく水洗トイレにしようとすると,浄化槽を設置することになります.以前はトイレの汚物だけを処理する単独処理浄化槽と,それ以外の台所の排水なども一緒に処理する合併処理浄化槽の2種類がありましたが,今は法律により合併処理浄化槽に一本化されています.
浄化槽

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地産地消への取り組み

先にご案内していた「地材地消モデル住宅」の見学会は無事終了しました.私は当日,今回の取り組みの中心的な役割を担ってくださった丸善木材さんから朝,20名ほどの方と一緒にバスに乗りこみました.途中,弟子屈中学校に立ち寄り,道産材普及の事業で天板をから松の集成材にした机を見学したのち,美留和の現場に向かいました.雪解けのこの時期,あいにく敷地内は足下が悪い状態でしたが,釧路管内各地から50名ほどの方々が集まるにぎやかな見学会となりました.
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「地材地消モデル住宅」公開のお知らせ

現在,私の設計で弟子屈町美留和で建設中のTM邸は,地場産のからまつを構造材に使った「地材地消モデル住宅」で,そのからまつによる軸組があらわしになっている建設途中の状態を,一般の方々に公開することになりました.期間は平成19年3月27日と28日の二日間,時間は9時から16時の間です.場所は国道391号線沿いの美留和近郊(さけますふ化場近く)ですが,見学ご希望の方はこちらのページからメールをお送りください.折り返し,詳しい案内図等の資料をメールでお送りします.
からまつの製材
画像は今回の現場で使われる人工乾燥を終えたあとのからまつの柱です.

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地球温暖化

暖冬です.テレビの解説によるとエルニーニョ現象の影響だそうですが,やはり地球温暖化が進んでいるように感じます.私の住む釧路はもともと冷涼な気候なので,「すこしくらい温暖化したほうが過ごしやすいかな」などと勝手なことを考えてしまいますが,長い目で地球全体の環境を考えるとやはり何とかしなければならないのだと思います.特にモルディブのように島々で成り立つ国は,温暖化で海面が上昇すると水没してしまうので問題は深刻です.
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地材地消

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住宅を主にあつかった建築雑誌をみていると,日本各地で地元の山の木を使った住宅建設の取り組みがあることがわかります.本州の多くの地方では杉,北海道ではカラ松です.私が所属する北海道木質構造開発協議会も地場産カラ松の有効利用についての取り組みをしています.以前に埼玉で同様の活動をしている「埼玉住まいの会」の方々を訪ねたことがあります.そこでは西川材といわれる地元埼玉の杉を使った住宅に取り組んでいました.設計者の有志グループが木材供給者や工務店と連携して,地場産木材を使った住まいづくりに取り組んでいます.北海道でこうした取り組みを表現することばに「地材地消」というのがあります.地元の木を地元で消費しようという意味です.元々は「地産地消」という木材に限らず農作物などについてのことばから派生しています.いわゆるスローフード運動と同義といっていいと思います.
地元,言い換えれば国産の木材を使うことがなぜ重要なのか,それには地球温暖化を防ぐための環境問題,それと地元の林業を支えようという経済的な側面があります.

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