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2014年02月26日

電気か灯油か

暖房の熱源は電気がいいのか,灯油(石油)がいいのか,最近のランニングコストの動向も踏まえて考えてみたいと思います.

北海道の電気料金は去年9月の値上げに引き続き,最近のニュースではさらなる値上げがあるのではとされています.現状,オール電化住宅の暖房用電気料金は灯油などと比べどうなっているのでしょうか.分析してみます.

試算するモデルは前回と同じで,この住宅を深夜電力利用の蓄熱式で暖房した場合を考えてみます.
 
暖房システム効率については後でも述べますが,ここでは灯油ボイラーと同じとして,年間の暖房用エネルギー消費量は14,663[KWh]とします.現在の深夜電力料金は10.14[円/KWh]ですから,単純にかけ算をして,年間で148,700円ほどです.

灯油の必要量は1,527[L]でしたから,灯油の価格を105[円/L]とするとこちらはおよそ160,300円.だいぶ差が縮まってきましたが,まだ深夜電力の方が安そうです.ここで気をつけなければならないのは,2013年10月以前に使用開始していた場合と,それ以後の場合はマイコン制御の機器を使っている場合の割引の有無が違うということです.

料金割引が適用の場合,この規模の住宅のヒーター容量は26[kW]くらいとして,現在の割引単価は105[円/kW]なので,年間に
26[kW] × 105[円] × 12[ヶ月] = 32,760[円]の割引がありますので,トータルで
148,700 - 32,760 = 115,940[円]となり,これははっきり灯油より優位そうです.

残念ながら2013年10月以降に新規契約された方はこの割引が適用されません.そのこともあって,新規にオール電化を採用する住宅は料金改正を機にぱったり少なくなったと聞きました.

これまで深夜電力での暖房をしていた住宅では去年の値上げでどれほど影響が出たか,試算してみます.
深夜電力の単価はそれまでの8.37[円/kWh]から10.14[円/kWh]に値上がりし,マイコン制御の割引単価は147[円/kW]から105[円/kW]に引き下げられたので,上記住宅の消費電力で計算すると,去年までの料金だと年間77,000円ほどの計算になります.一挙に4万円近い値上がりで,これにさらに電気温水器や一般電灯の電気代の値上がり分も積み上がってきますから,オール電化の家は相当な値上がり感を感じていると思います.

深夜電力の蓄熱式暖房の場合のシステム効率ですが,手元にある6年ほど前の電力会社の資料を見ると,蓄熱式100に対して灯油ボイラーは82%という数字があり,電力のほうが優れているかのようですが,そのまま鵜呑みにするわけにはいかないと思います.というのも両者には使い勝手上の大きな違いがあるからです.

蓄熱式は安価な深夜電力を使って蓄熱体に熱をため込み,その他の時間徐々にその熱を放熱するという方法ですので,微調整が効きません.これまで往々見られたように天気のいい日は室温が暑くなりすぎて窓を開けて熱を逃がすなどということもあり,無駄が生じていた側面もあると思います.その点,ボイラーはその時の状況に応じてリアルタイムで暖房負荷を調整できるので,そうした無駄が少ないといえます.

もっとも機器の長期的な寿命といった側面では電気のほうが優れています.電気のヒーターは寿命は半永久的ですし,長く使っていても効率は落ちないし,メンテナンスも不要です.一方,灯油のボイラーはバーナーで燃焼させるので,煤がついてくると効率が落ちてきますし,定期的な分解掃除などのメンテナンスも必要です.最終的な耐用年数も15年ほどでしょうか.

このように電気と灯油ではそれぞれ一長一短あるわけですが,これまではメンテナンスのしやすさとランニングコストの安さで電気が優位で,オール電化住宅の大幅な普及につながってきました.しかしここに来て前述のようにその優位性は揺らいでいます.

今後の灯油価格と電気料金の推移に注目しています.

2014年02月19日

暖房のランニングコスト

 ここ数年私が設計してきた住宅は,深夜電力を利用した蓄熱式の暖房ばかりでした.場合によって補助的に融雪電力を使ったり,あるいはオーナーさんの意向でペレットストーブや薪ストーブを併設することもありましたが,メインの暖房は深夜電力でした.それというのもランニングコストが灯油など他の熱源に比べて安かったからです.

 しかし,東日本大震災とそれにともなう福島第一原発事故後のエネルギー事情の変化から,北海道でも電気代は平成25年10月,大幅に値上がりしました.オール電化住宅にお住まいの方はこの冬の電気代の値上がりを痛感されていることでしょう.

 また一方で灯油の方もここ数年高値が続き,この冬はいっそう値上がりしています.ここ道東では配達価格が1リットルあたり110円になろうとしています.灯油で暖房している方々もこの冬は厳しさを感じていることと思います.こんな状況で,これからの住宅は何を熱源にしたらいいのか,とても悩ましい状況です.

 今年,これから弟子屈町に建設予定の住宅は暖房の熱源に温泉を利用します.弟子屈町周辺は温泉資源の豊富なところで,この建設地の温泉源は浴用として15戸ほどに温泉を供給していますが,それでも余るほどの量があるので,それを利用することになりました.自然再生可能エネルギーの一種である温泉熱による暖房です.

 今回は,もし温泉熱が利用できない場合,灯油や深夜電力ならどれくらいランニングコストがかかるのか計算してみようと思いました.

 モデルとする住宅は弟子屈町に建設する木造平屋建て,延べ床面積は115㎡(35坪),熱損失係数(Q値)は1.37[W/㎡・K]です.

 計算方法の概略は以下の通りです.

 まず,暖房以外に室内で発生する熱量(室内取得熱)を算出します.これには日射取得熱と室内発生熱があります.日射取得熱は窓から入ってくる日射によって得られる熱で,方位ごとの窓の大きさと,建設地域別にどれだけ冬期間日射があるかによる係数から算出します.室内発生熱は家電製品や調理機器,あるいは中で居住する人から発生する熱で,単位面積あたりの熱量に床面積を乗じて算出します.

 この室内取得熱から住宅の断熱性能である熱損失係数を勘案して,室温として得られる温度差(この差を自然温度差といいます)を算出します.

 暖房が必要な時期,目標とする室内の温度(暖房設定温度)に対して外気温は当然低いわけですが,自然温度差を差し引いてさらに足りない部分が暖房に必要な熱量になります.この熱量を一年を通して積算します.

画像1.jpg

 グラフの青い線が一年間の平均気温の推移です.一番上の緑の線が暖房設定温度でここでは22℃としています.自然温度差は8℃なのでこれを差し引いて,それでも足りないオレンジ部分の熱量が暖房に必要な熱量となり,年間のその積算値を暖房度日数といいます.

 最後に暖房度日数を得るための灯油の消費量を計算します.ここでは灯油のボイラーを使用することとして,暖房システム効率を考慮し灯油の発熱量から必要量を算出します.

 今回の計算の結果は以下の通りです.

画像2.jpg

 灯油のボイラーで暖房した場合,1年間で1,527リットルの灯油が必要で,金額にすると16~17万円ほどかかることがわかります.決して少なくない金額です.

 当然のことですが,寒冷地では水道光熱費のうち暖房費の占める割合が高くなってきます.暖房のランニングコストを削減するためには,断熱性能を高めることが必要になりますが,それはそれでイニシャルコストがかかります.そうしたコストのバランスを設計段階で十分検討することが必要だと思います.

 また,この道東では豊富な温泉資源や地熱を利用した住宅も,これからますます必要になってくると考えています.