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薪ストーブ

北海道で田舎暮らしをしようという方は,薪ストーブのある家を望まれていることがままあり,私もこれまでたくさんそうした家を設計させていただきました.ただしいつもご提案するのはメインの暖房は他に確保し,薪ストーブはあくまでも補助暖房にしましょうということです.寒冷地住宅の暖房は各部屋に熱源を設置し家全体をまんべんなく暖かくするというのが,快適性の上でふさわしいので,熱源が一ヶ所になってしまう薪ストーブをメインの暖房にするというのはお薦めできません.それに朝起きたら薪が燃え尽きていて寒かったというのも避けたいところです.冷え込んだ朝に寒い中布団から起きだして,ストーブに火を入れることのつらさは私たちが子供の頃の記憶としてはありますが,現代の住宅では避けたいことだと元来北海道で生まれ育った私は思います.
薪ストーブを設置する際,迷うのが煙突です.今までは煙突掃除のしやすさを優先して,ストーブを外壁近くにレイアウトし,すぐに壁から外に出して断熱煙突で立ち上げるという方法をとることにしていました.画像がそうした例です.
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このほうが煙突掃除が屋外でできるのでメンテナンスは楽なのですが,ただし断熱煙突が長くなるぶん費用がかかります.

もうひとつ屋外の煙突が長い場合に気を付けなければならないのは,燃やし始めにコツがいるということです.煙突内部の冷えた空気が重しになって,余熱を充分に加えないと煙が出ていってくれないのです.常時燃やし続けるのなら問題ないのですが,たまに使おうとすると面倒かもしれません.
今回のTY邸では屋内で煙突を立ち上げました.このほうが煙突からの室内への放熱もあるので効率はいいといえます.今回は木の内装に黒い塗装の煙突が高い吹き抜けを立ち上がっているのが視覚的にもアクセントになりました.
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もうひとつ,薪ストーブを設置するのに留意するのが空気の取り入れです.現在の寒冷地住宅は気密性が高く,換気も常時運転の機械換気が主流です.薪ストーブは薪を燃やすのに大量の空気が必要で,そのための外気の取り入れを考慮しないと煙が煙突から出て行かなく室内に逆流してしまうことがあります.ですから,ストーブの近くに外気取り入れのレジスターを設けることになるのですが,厳冬期はとても冷たい外気を室内に入れることになり,暖房効率の上で矛盾が生じることになります.今回TY邸で設置したDutchwest製のストーブは直接ストーブに外気を取り入れるオプションがあって画像のようにダクトで直接外気が取り入れるようになっていてその点では優れています.
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学生の頃,長野県出身の友人がいて彼のご両親が所有する北アルプスの別荘に冬季泊めてもらったことがありました.そこには薪ストーブがあって,ガラス越しに薪が燃える火が見えてとても楽しかった思い出があります.だから暖炉や薪ストーブが住宅の中にあることのよさはとてもよくわかります.そうした「ファイアープレイス」は家の中心として西洋の住宅では重要視されていたことも承知しています.ただし薪ストーブは手間暇がかかることを忘れてはいけません.設置したはいいけど,面倒で使わなくなった方も多くみうけられます.薪も多くの場合有料なのでランニングコストも問題です.何よりも薪割りが必要だったり,常時薪をくべたりする手間がかかります.その手間を楽しむことができるかどうか,じゅうぶんに考える必要があると思います.

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