« 豊潤な神々 | コラム トップ | 廊下 »

北の家図鑑

今日は月曜塾の例会日で,先日の南大通周辺での町歩きで他の班が撮影した写真を見ることができたので,その中から画像を載せようと思いました.
でも,その前に釧路の古い建物を知る上でとても参考になる本をご紹介します.涌井義美さんという方が絵と文をかかれた「釧路発 北の家図鑑」です.
北の家図鑑 表紙
明治から昭和の初期にかけて建てられた,主に住宅を中心に釧路の古い建物をイラスト入りで解説した本で,釧路の古建築を知るにはとても参考になる貴重な本です.

その表紙にある家が現存しています.
大町住宅
「北の家図鑑」によると,この家は1887年(明治20年)ころ,近くの海で座礁した帆船の材を再利用して建てたといわれているとあります.舟の材料を使って建てたということもそうですが,120年あまり前に建てられたということにも驚かされます.今も住む人がいて,たえず手入れを怠らないのでこのようにいい状態であるのでしょう.このあたりは何度か大火に見舞われていますが,焼失しなかったのもとても運が良かったといえるかもしれません.
入舟町住宅
入船町のこの住宅もとても保存状態のいい家です.玄関の庇のちょっと優雅で軽やかな感じや,2階のシンメトリーの出窓など,とても端正でおしゃれなデザインです.やはり「北の家図鑑」によると昭和13年から15年ころに建てられたとあります.

「北の家図鑑」は1990年の発行で,大町や米町の街並みを紹介したものを除くと34棟の建物が取り上げられています.発行の時点ですでに6棟が取り壊されていたようですが,今回の町歩きでさらに多くの建物が消滅しているのがわかりました.中には「浪花町十六番倉庫」や,「蔵の会」によって運営されている大町の土蔵のように保存再生運動により今も市民に親しまれている建物もありますが,多くはやがて朽ち果てて解体される運命なのでしょう.ヨーロッパの石造の建物と違い,保存の難しい日本の木造建築ですが,街の歴史の記憶としてなんとか保存維持できないものかと思います.

「北の家図鑑」に興味のある方は発行元である豊文堂書店にお問い合わせいただくと,手にはいるかもしれません.私も数年前,そこで買い求めました.

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mobi-archi.com/mt/mt-tb.cgi/56