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釧路湖陵高校同窓会館

先日,私の母校である釧路湖陵高校同窓会館に行って来ました.今年は私の学年が同窓会の幹事を担当する年で,その幹事会が同窓会館であったのです.
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この建物の設計者が1960年に湖陵高校を卒業している毛綱毅曠(もづなきこう)氏です.

毛綱氏の建築は釧路周辺に多くあり,どれもとてもユニークなものです.特に釧路市立博物館釧路市湿原展望台などの1980年代初頭の設計で1985年の日本建築学会作品賞も受賞している偉大な建築家ですが,2001年に59歳という若さでこの世を去っています.私も高校在学中からこの偉大な先輩のことは知っていました.残念ながら,直接お会いしたことはありませんでした.
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この同窓会館ですが,私が中に入ったのは今回が2回目です.昨年の暮れに月曜塾の仲間と見学したのが最初です.旧約聖書にある「ノアの箱船」がモチーフになっているそうです.実はこの建物,竣工したのは1996年とかなり以前ですが,諸般の事情により長らく使われない状態が続いていました.最近になって,かつての校舎の資料を展示するスペースに改装され少しずつ使われるようになったようです.長らく使われなかった事情については,計画段階に私は釧路にいませんでしたし同窓会の活動も知りませんでしたので,何ともいえません.ただ,結果的にボタンの掛け違いといったことが起こり,不測の事態になったようです.私たち同窓生がこの建物について堂々と語れないのは何とも残念です.
毛綱建築を体験するとき,いつも私が突きつけられるのは「建築とは何か」という根元的な問いです.近代の合理性や機能を重視する考えに反し,毛綱建築は宗教的なあるいは形而上的な観念を建築で表現しようとし,社会との関連性よりはそれ自体の造形美を追求しているように思います.私はかつて海外に行って異質な文化に触れながら,あらためて日本という自分の国の文化について考えさせられたという経験がありますが,毛綱建築を見ることは同じような感じです.異質なものに触れて,あらためて自分のアイデンティティーについて考えてしまいます.そして,どんなさまたげがあっても自分の信じるものを作りきるその強さに敬服します.

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